Far out in the Ocean, at the Garden of Mermaid|遠い海のなか、人魚姫の庭

May 10 2009
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Far out in the ocean the water is as blue as the petals of the loveliest cornflower, and as clear as the purest glass… 遠い海のなか、水は愛らしい矢車草の花びらのようにあおく、純粋なガラスのように透明・・・

という冒頭文からもわかるように、アンデルセンの描く「人魚姫」の物語の描写は細部にわたりとても色彩豊かです。しかしアンデルセンはただ単に物語を美しい言葉で飾り立てただけではなく、そこには実にアンデルセンらしいウィットに富んだ「暗示」のようなものがあります。今回のこの展示ではこのアンデルセンの描いた「色」に焦点を当てて表現しました。

この物語には冒頭文の「あお」を筆頭に多くの、そして象徴的な色が登場します。物語のはじめの部分、人魚の住む世界の描写や人魚姫自身のこと、地上への憧れを描いている部分には色鮮やかで華やかな色が多く輝きに満ちています。amber(琥珀色)、flaming red(燃え立つような赤)、deep-blue(深い青)、glittered like gold(黄金のようにきらめく)、as blue as burning brimstone(燃えるような硫黄石の青)、rose-colored(ローズに彩られた)、violet tint(ほのかなすみれ色)・・・枚挙にいとまがありません。

しかし中盤からは一変してダークで無彩色に近い色に染まった世界が広がります。それは甘い恋物語ではなく、王子を求める情熱的な想いとは裏腹に懐かしい海の世界や家族を思う葛藤や苦悩に溢れていますが、物語の最後ではその悲しみを超え人魚姫が空気の娘たちとともに天に昇っていく様子は一気にまばゆい光の温かな世界に包まれます。

そして、この物語で最も象徴的なのは人魚姫の作るお庭です。
『他の娘たちとは違い人魚姫は太陽のようにまん丸な花壇を作り太陽のような赤い花しか植えませんでした。またその花壇には海底に沈んだ船にあったうつくしい男の子の像を置き、その横にはバラ色の柳の木を植えました。次第にそのしだれた枝はあおい砂に届き、揺らめくその影はほのかなすみれ色に染まり、まるで木の根と枝々がじゃれあいながらキスをしているようでした。』

海のイメージの「あお」の世界とは対照的に、情熱的な「あか」の世界です。 人魚姫が選んだ「太陽のような赤」は隣に置いた美しい男子の像が物語るように、すでにこの王子に出会うこと、そして彼に対する強い憧れや恋心を予感させますが、それだけではなく「あか」=「血の色」とするなら、「王子が寝ている間にナイフで刺し、その温かい血を浴びれば脚がもとの尾尻にもどり、海へ帰れる」というこの物語の残酷なクライマックスシーンをも彷彿させます。それを考えると、後半部分の「まるで木の根と枝々がじゃれあいながらキスをしているようでした。」という表現は人魚姫の叶えることのできない想いをより一層くっきりと浮かび上がらせているようにも思えます。さらに、地上にあがることを許される 15 歳の誕生日に身につける白ユリの花も「純潔・威厳・無垢」といった花言葉から、まるで地上にあがる前から王子に想いを告げることもなく、ただ見守るだけの愛を選んだ人魚姫を、王子に出会う前から象徴しているようです。

このような色の変化や描写を追いながら、また主人公である人魚姫の凛とした芯の強くも思いやりに溢れた人物像を発見しながら「人魚姫」という物語をあらためて楽しんでいただけたらさいわいです。

【展覧会序文から一部抜粋】


The work for

A Group Exhibition
Once Upon A Time: Chapter One ~ Far out in the Ocean, at the Garden of Mermaid
ふたり展『遠い海のなか、人魚姫の庭』

March 9th -15th 2009
Gallery Conceal Shibuya [Tokyo, Japan]

calligraphy & installation of fabric flower by Risa Kojo|カリグラフィ&布花:古城里紗
Illustration by Aki Morita|絵:森田有紀

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